フリーランスエンジニアの単価相場と手取り: 月 70 万の案件で手元にいくら残るか、会社員の年収と正しく比べる
フリーランス PM を 2 年やって会社員に戻った立場から、単価の相場 (経験年数・領域・稼働日数別)、手取りの計算式、経費と税金、会社員の年収との換算方法、「やめとけ」と言われる理由をまとめました。
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フリーランスエンジニアの「月単価 70 万円」は、会社員の「年収 840 万円」ではありません。手元に残るのは額面の 6〜7 割で、会社員の年収と比べるなら 1.3〜1.5 倍で割り引く のが実態に近いです。
この記事では、単価の相場、手取りの計算、会社員との正しい比べ方、そして「やめとけ」と言われる理由を、数字で整理します。
私の立場
私は SIer と製造業のシステム開発を経て、いったんフリーランスになり、PM として 2 年ほど働きました。その後 2020 年に製造業メーカーの IT 部門に就職し、今は会社員です。
つまり、フリーランスを「やってみて、戻った」人間です。フリーランスを勧める立場でも、止める立場でもありません。両方を経験した上で、数字がどう見えたかを書きます。
単価は月 90〜110 万円でした。PM 補佐の案件を狙っていたので、6 年前としては高い方です。同じ現場のプログラマーは 80〜90 万でした。週 5 稼働で、案件はすべてエージェントの紹介です。直接契約は一度もありませんでした。
戻った理由は収入ではなく、家族です。フリーランスは、案件と案件の間が 3 か月空くことがあります。その間は毎日家にいます。年収は 1,000 万あって足りていたのに、「次が決まらないまま家にいる姿」を家族が見続ける方が、よほど不安だったのだと思います。
単価の相場
フリーランスの単価は、おおまかに 経験年数 × 領域 × 稼働日数 で決まります。エージェント各社が公開している市場動向をもとに、2026 年時点の目安をまとめます。
経験年数別
| 経験年数 | 月単価の目安 |
|---|---|
| 1〜2 年 | 40〜50 万円 |
| 3 年 | 65 万円 |
| 4 年 | 70 万円 |
| 5 年以上 | 80 万円〜 |
出典: ITプロパートナーズ「フリーランスエンジニアの単価相場」 (2026-03-22 更新、同社の掲載案件から算出。2026-09-22 取得)。3 年目で会社員の平均年収を超える月単価になり、5 年で 80 万が見える、という形です。
職種別
| 職種 | レバテックフリーランス (平均) | ITプロパートナーズ (幅) |
|---|---|---|
| プログラマー | 67 万円 | (公開なし) |
| インフラエンジニア | 68 万円 | (公開なし) |
| システムエンジニア | 71 万円 | 60〜100 万円 |
| フロントエンドエンジニア | 72 万円 | 50〜80 万円 |
| データサイエンティスト | 75 万円 | (公開なし) |
| アプリケーションエンジニア | 77 万円 | (公開なし) |
| AI エンジニア | (公開なし) | 70〜100 万円 |
| プロジェクトマネージャー | 82 万円 | 70〜150 万円 (PM・PMO) |
| IT コンサルタント | 90 万円 | (公開なし) |
出典: レバテックフリーランス「フリーランスエンジニアの月収はいくら?」 (同社の単価相場を参考にした平均値。集計時期の明記なし。2026-09-22 取得)、ITプロパートナーズは上と同じ。どちらも平均か中央値かは明記されていません。PM と IT コンサルは開発職より 10〜20 万高く、上流に寄るほど単価が上がる構造は 2 社で共通です。
言語別
| 言語 | レバテックフリーランス | ITプロパートナーズ | 案件数の傾向 |
|---|---|---|---|
| Java | 69 万円 | 65 万円 | 業務系で最も多い。単価は安定 |
| JavaScript | 72 万円 | 65 万円 | Web フロントで多い |
| PHP | 72 万円 | 70 万円 | Web 系で多い |
| C# | 67 万円 | (公開なし) | 業務系・ゲーム |
| Python | 76 万円 | 80 万円 | データ・ML・AI で高め |
| Ruby | 80 万円 | 75 万円 | スタートアップの Web 系 |
| Swift | 79 万円 | 75 万円 | iOS |
| Kotlin | 81 万円 | (公開なし) | Android |
| Go | 82 万円 | 80 万円 | 案件は少ないが高単価 |
出典は職種別と同じ 2 社。案件数の多い Java・PHP・JavaScript が 65〜72 万、案件の少ない Go・Kotlin・Ruby が 80 万前後です。単価は「需要」より「供給の少なさ」で決まっています。AWS / GCP や Databricks / Snowflake のようなインフラ・データ基盤の技術は、2 社とも言語別の表には出していません。
稼働日数
週 5 日が基本ですが、週 3〜4 日の案件も増えています。単価は日割りより少し不利になることが多く、週 3 なら週 5 の 55〜60% くらいが目安です。副業として週 2 で入る形もあります。
「月単価」は、多くの場合「月 140〜180 時間の稼働」を前提にした精算幅つきの金額です。下限を割ると減額、上限を超えると増額されます。契約書の精算幅を必ず確認してください。
手取りの計算
ここが会社員と一番違うところです。月単価 70 万円、週 5 稼働、12 か月フル稼働で計算してみます。
引かれるもの
前提: 35 歳、単身、東京 23 区在住、青色申告、消費税は簡易課税。
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 売上 | 840 万円 | 70 万 × 12 (税抜) |
| 経費 | -80 万円 | PC、通信費、書籍、交通費、家賃の一部など。人によって 50〜150 万 |
| 事業所得 (青色申告特別控除 65 万を引いた後) | 695 万円 | |
| 所得控除 | -155 万円 | 基礎控除 58 万 + 社会保険料控除 97 万 (下の国保と国民年金) |
| 課税所得 | 540 万円 | |
| 所得税 | -66.6 万円 | 540 万 × 20% − 42.75 万、復興特別所得税 2.1% 込み |
| 住民税 | -55.8 万円 | 課税所得 (基礎控除は 43 万) × 10% + 均等割 |
| 国民健康保険 | -75.7 万円 | 練馬区の 2026 年度料率。40〜64 歳は介護分が乗って 92.7 万 |
| 国民年金 | -21.5 万円 | 月 17,920 円 (2026 年度) |
| 個人事業税 | -23.5 万円 | (所得 760 万 − 事業主控除 290 万) × 5%。「請負業」に該当する場合 |
| 手取り | 約 517 万円 | 売上の 61%。個人事業税がかからなければ約 540 万 (64%) |
国保の計算は 練馬区の 2026 年度料率 (医療分 7.51% + 支援金分 2.80% + 子ども・子育て分 0.27%、均等割 67,073 円) を使いました。区によって 1〜2 割の差があります。国民年金は 2026 年度で月 17,920 円 です。
個人事業税は、東京都ではエンジニアの業務委託を「請負業」(税率 5%) として課税するのが一般的です。ただし準委任契約の扱いは都税事務所の判断で分かれ、対象外になる例もあります。開業届の業種欄と契約書の形態で決まるので、確定申告の前に都税事務所に確認してください。
消費税は上の表に入れていません。単価 70 万が税抜なら、実際には 77 万を受け取り、簡易課税 (第 5 種、みなし仕入率 50%) で納めるのは受け取った消費税 84 万の半分の 42 万です。残る 42 万は所得に加わり、その分の所得税と住民税もかかります。
ざっくり 売上の 6〜7 割 が手元に残る、と覚えておくと大きく外れません。経費が多い、節税を工夫している (小規模企業共済、iDeCo)、といった要素で 7 割に近づきます。
経費で落ちるもの、落ちないもの
- 落ちる: 仕事用の PC・周辺機器、通信費、クラウドや VPS の利用料、技術書、セミナー、交通費、自宅で仕事をしているなら家賃・光熱費の按分
- 落ちにくい: スーツ、ジム、私用と分けられない食事
- 迷うもの: 仕事でも使うスマホ (按分)、カフェでの作業代 (打ち合わせなら会議費)
このサイトで扱っている VPS も、仕事に使うなら経費です。Claude Code の常駐環境や、検証用のサーバー代は「通信費」か「消耗品費」で計上できます。
インボイス
2023 年 10 月以降、取引先 (エージェントや企業) は、インボイス登録のない相手への支払いで消費税の控除が受けられません。そのため、多くのエージェントは登録を求めるか、未登録なら単価から消費税相当を差し引きます。実質、登録する一択です。簡易課税を選べば、納める消費税は売上の 5% 程度に収まります。
会社員の年収と正しく比べる
「フリーランスになったら年収が 1.5 倍になった」という話は、比べ方が間違っていることが多いです。会社員の年収には、給与明細に載らないものが含まれています。
| 会社員が受け取っているもの | フリーランスでは |
|---|---|
| 社会保険料の会社負担分 (給与の約 15%) | 全額自己負担 (国保 + 国民年金) |
| 厚生年金 | 国民年金のみ。将来の受給額が大きく違う |
| 有給休暇 | 休んだ分は売上ゼロ |
| 賞与、退職金 | なし |
| 案件の切れ目 | 次の案件までの空白期間は売上ゼロ |
| 傷病手当、育休の給付 | 原則なし |
これを金額に直すと、フリーランスの売上を 1.3〜1.5 で割ったものが、会社員の年収に相当 します。月 70 万 (年 840 万) なら、会社員の年収 560〜650 万円くらいと同じ生活水準です。
会社負担分の内訳は、健康保険 約 5% (協会けんぽ東京の料率の半分)、厚生年金 9.15% (18.3% の半分)、雇用保険 0.9%、子ども・子育て拠出金 0.36%、労災 約 0.3% で、合計 約 15.7% です。年収 600 万の会社員なら、会社が別に約 94 万を払っています。
年金の差はもっと大きいです。2026 年度の年金額で、国民年金の満額は月 70,608 円。厚生年金のモデル世帯 (夫婦 2 人、基礎年金込み) は月 237,279 円で、そこから基礎年金 2 人分を引いた報酬比例部分は約 96,000 円です。つまり同じ 40 年働いても、会社員は月 16.6 万、フリーランス (国民年金のみ) は月 7.1 万で、差は月 9.5 万、年 114 万です。これを自分で埋めるなら、iDeCo や小規模企業共済で年 100 万前後を積む必要があります。
逆に言うと、会社員で年収 600 万の人がフリーランスになって月 70 万を取れるなら、収入面ではトントンで、自由度と引き換えにリスクを持つ、という判断になります。
「やめとけ」と言われる理由
検索すると「フリーランス エンジニア やめとけ」「末路」が出てきます。言われている理由はだいたい次の 5 つで、どれも半分は本当です。
- 案件が切れる。景気が悪くなると、真っ先に外部の契約が切られる。2 年やって 1 度は空白期間があると思った方がいい
- 年齢で単価が頭打ちになる。40 代後半から、同じスキルでも案件が減る。上流 (PM、アーキテクト) か、希少な技術に寄せていないと厳しい
- スキルが偏る。同じ現場に長くいると、その現場の技術しか身につかない。会社員のような異動や研修がない
- 孤独。相談相手も、評価してくれる上司もいない。これは向き不向きが大きい
- 信用。住宅ローンや賃貸の審査で不利。開業 3 年以内は特に
私の場合、5 つのうち当たったのは 1 番目だけでした。
案件が切れるは本当でした。コロナ禍で 3 か月空きました。収入は年 1,000 万で足りていたので、困ったのはお金ではなく「読めないこと」です。次がいつ決まるか分からないまま、毎日家にいる。今にして思えば、空白の期間こそコワーキングでもどこでも、毎日どこかに出勤した方がよかった。家族が見ているのは通帳ではなく、生活のリズムです。
単価の頭打ちは 40 代後半ではなく、金額で来ます。私の周りでは月 120 万あたりが天井で、年収にして 1,500 万です。今は雇う側にいるので分かりますが、120 万は発注する側にとっても大きな壁です。それ以上を出すのは、長期の関係ができてからになります。
スキルが偏るは、常駐案件なら当てはまりませんでした。現場にいれば PM 補佐でも設計でも運用でも、いろいろな仕事が降ってきます。偏るかどうかは働き方次第で、フリーランスかどうかは関係ないと思います。
孤独もありませんでした。同じ現場のフリーランス同士で飲みに行っていました。信用で困ったこともありません。
つまり「やめとけ」の理由で本当に効くのは、案件の空白と、それを家族がどう受け止めるかです。これは単価表には出てきません。
単価を上げる要素
相場より上を取っている人に共通しているのは、次のどれかです。
- エンド直。エージェントを挟まず、企業と直接契約する。エージェントのマージン (一般に 10〜25% 程度と言われる) がそのまま単価に乗る。ただし営業と契約事務を自分でやる
- 上流工程。要件定義、アーキテクチャ設計、PM。上の職種別の表では、レバテックの平均で PM が 82 万円、プログラマーが 67 万円と、15 万円の差がある
- 希少技術。データ基盤 (Databricks、Snowflake)、SRE、セキュリティ。案件数は少ないが競合も少ない
- 実績の見える化。GitHub、技術ブログ、登壇。「この人は何ができるか」が事前に分かると、面談が短くなり単価交渉が通りやすい
このサイト自体が 4 番目の実践でもあります。
エージェントをどう使うか
最初の案件はエージェント経由が現実的です。営業を代行してくれて、契約と請求も任せられます。マージンは取られますが、案件の切れ目を短くする保険と考えれば妥当です。
複数のエージェントに登録して、単価と案件の質を比べるのが基本です。1 社だけだと、そのエージェントの持っている案件の範囲でしか選べません。
各社のマージン、支払いサイト、保障の違いは「フリーランスエンジニアのエージェント比較」にまとめました。
まとめ
- 単価は経験年数 × 領域 × 稼働日数。相場表で自分の位置を知る
- 手取りは売上の 6〜7 割。経費、国保、国民年金、消費税を引いた後の額で考える
- 会社員の年収と比べるなら、売上を 1.3〜1.5 で割る。月 70 万は会社員の 560〜650 万相当
- 「やめとけ」の 5 つの理由のうち、本当に効くのは案件の空白。困るのはお金ではなく「読めないこと」と、それを家族がどう見るか
- 単価の天井は月 120 万あたり。雇う側から見ても、そこが壁
- 単価を上げるのは、エンド直、上流、希少技術、実績の見える化
- 最初はエージェントを複数使って、単価の相場感をつかむ